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法定相続人でも相続権がなくなる行為とは?

2018.04.26

法定相続人でも相続権がなくなる行為とは?

#お金 #暮らし #相続

法定相続人でも相続人になれないことがある!
私たちの社会では、人が亡くなった場合、その人の財産を承継する「相続」が発生します。このとき、故人の配偶者や親、子どもなど民法で定められた範囲の相続人である法定相続人は、相続人になり財産を譲り受ける権利を有します。

しかしこれはあくまで原則で、相続人資格そのものが剥奪されることもあります。どのようなときに相続権が失われるのか、今回はそうした特別なケースにスポットを当て、相続人が確定される流れについて確認することとしましょう。

 

どんなことをすると相続できなくなるの?
本来なら相続人となるはずの推定相続人が、相続に関して重大な不正行為をとった場合、相続人としての一切の権利が失われるという決まりがあります。これを「相続欠格」といい、民法891条に詳細が定められています。「相続欠格」になると、相続人は特別な手続きを経ることもなくそのまま相続権を失います。遺贈も受けられないため、被相続人の財産は全く取得できないことになります。

・相続欠格 例①
被相続人の生命を侵害するような行動をとった場合。
相続人が被相続人に対する殺人や殺人未遂の罪により、刑に処せられたケースなどがこれにあたります。積極的な殺人や殺人未遂だけでなく、介護を必要としている被相続人に対し、食べ物を与えないなど意図的に放置した遺棄罪も該当します。

また、自分が相続において有利な位置につけるよう、同順位以上の相続人を殺害しようとして刑に処せられた場合も相続欠格となります。父親の遺産を目当てに、母親や兄弟を殺害したといった事例がそうです。

ただしあくまで殺人や殺人未遂で罰せられたことがポイントになるため、過失致死の場合は欠格事由となりません。正当防衛が認められ、これらの刑に処せられなかった場合も相続権が残ります。

一方、亡くなった被相続人が、実際は殺害されたものであることを知りながら、犯人をかばうなどし、これを告訴・告発しなかった相続人も、相続欠格となります。

このケースには例外があり、殺害した犯人がその相続人の配偶者や親、子どもといった直系血族である場合や、すでに犯罪が発覚して捜査が始まっていたような場合は除かれます。また、相続人本人に十分な善悪の区別、是非の判別能力が認められない場合も欠格事由とはされません。告訴できないと考えるのが妥当な小さな子どもなどは、この部分から権利が守られることとなるでしょう。

・相続欠格 例②
被相続人が生前に行う相続関連の遺言行為に対し、不当な干渉行為をとった場合が挙げられます。被相続人は遺言を自らの意思に従い、自由に書き残せなければいけません。これを詐欺や脅迫といった手口を使って妨げ、取り消しや変更を行わせるなどすると、相続の公平性・正当性は大きく失われてしまいます。

被相続人がなそうとしている遺言の変更が、自分に不利な内容であることを知り、恐喝してそれを妨害したり、また被相続人に対し、強制的に自分にとって有利な内容へ遺言を書き換えさせたりした場合などがこれにあたります。

また遺言書を見つけた際に、その内容を偽造・変造したり、破棄・隠蔽したりした場合も、やはり相続欠格になります。

 

他にもある!相続廃除 
もし被相続人がどうしてもある相続人に遺産を渡したくないと考えた場合に、その人の相続権を失わせることは不可能なのでしょうか。

実は、十分な合理的理由がある場合に「相続廃除」という仕組みがあります。相続廃除が認められれば、通常は相続人に残る遺留分の請求権も剥奪することができます。

相続廃除は、被相続人が自ら申請して手続きをとっておくもので、その相続人が被相続人を虐待したり、極度の屈辱・侮辱を与えたりした場合、財産の不当な処分を行った場合、浪費・ギャンブル・犯罪・反社会的団体への加入など問題行動を繰り返して多額の借金やその他著しい迷惑行為・親不孝行為をとった場合などに認められます。

明白に財産目当てである婚姻関係や養子縁組を結んだケースなども該当する場合がありますが、いずれも客観的かつ社会的にみて、相続権が失われることを正当とみなせるほど重大な行いがみられること、被相続人の側には非がないにも関わらず、繰り返しそうした行為がなされていることがポイントになります。

相続廃除の対象となるのは、遺留分をもつ推定相続人に限られ、それ以外の相続人、兄弟姉妹などは適用外になります。こうした相続廃除が適用されない相手の相続権を外したい場合は、遺言書を作成してその旨を記載しておくこととなるでしょう。

相続廃除では家庭裁判所での手続きが必要です。生前にあらかじめ行っておく場合は、被相続人が家庭裁判所に廃除請求を行い、審判を経て決定となれば相続廃除が成立します。ほかに遺言で行うこともでき、この場合は被相続人が死亡したのを機に、遺言執行者が家庭裁判所へ廃除請求を行うものとなります。よって被相続人は遺言作成時に、この遺言執行者を決めておく必要があります。

 

相続欠格や相続廃除の撤回はある?
相続欠格や相続廃除が認められた場合、該当する相続人の権利はなくなります。では、その相続人が権利を取り戻したいと考えた場合に、方法はないのでしょうか。結論からいうと、相続欠格は撤回できませんが、相続廃除は取り消してもらうことができます。

相続欠格の場合で、被相続人が生前にその事由を許して財産を与えようとするならば、生前贈与などの方法しかありません。ただし相続人に子どもがいれば、その子どもが代襲相続人になることはできます。

一方、相続廃除の場合は取り消しが可能で、生前に家庭裁判所へ取り消し請求を行ってもらえれば、権利を回復できます。また廃除の手続きと同様、遺言書でその撤回意思を示し、遺言の執行者に後日、家庭裁判所で取り消しの手続きを行ってもらうようにすることで、再び相続人とすることもできるとされています。

このように撤回の可否という観点からみても、相続欠格は該当する事由があれば、そのまま相続権喪失となる、相続廃除はあくまで被相続人の意思にかかるもので、それが一定の条件を満たし手続きとしてとられると有効になる、と考えればよいでしょう。

(画像は写真素材 足成より)